第1章「無常と永遠について」 第3節
第3節 永遠への憧れについて
では、肉体と心が無常であり、本来ないものであるとすると、人間の存在とは仮象にすぎず、実在とは言えないのではないかと考えられてくる。
実在とは、無常を越えた永遠の存在である。しかし、この永遠なるものに、人間は古今東西を通じて憧れを持ってきたのである。
数多くの彫刻や絵が作られるのも、無常なるものを永遠化したいという欲求であろう。また、詩や小説によって人間の言葉を永遠化したいという欲求もあろう。
真善美聖への欲求の根本にあるものは、永遠への憧れであるのである。この地上を見渡してみても、どこにもない永遠というものを追求する心が、精神が、人間には先天的に備わっているのであり、この欲求があることが、人間の尊厳を創っているのである。
はたして、人間において、無常なるものへの憧れというものが存在するのであろうか。無常なるものは、やはり暗い印象を我々に与えるのではないだろうか。
それに比べて、永遠なるものに対する憧れというものは、非常に明るい肯定的な印象を我々に与えるのではないだろうか。ここに、人間の本来あるべき「かくあるべし」の理想が感じられるのである。