理念哲学講義録  天川貴之

真善美聖の「理念哲学」の核心を、様々な哲学的テーマに基づいて、わかりやすく講義したものです。

第1章「無常と永遠について」第6節

第6節  究極の使命について 

 

 真なるもの、善なるもの、美なるもの、聖なるものの究極にあるのは、絶対者そのものであり、創造の根源そのものである。創造の根源は、単なる無ではない。それは、絶対なる無である。絶対なる根源なのである。それは、生命である。無限なる生命である。光ある生命である。

 人間の生きる意味とは、永遠なる生命を、真、善、美、聖、すなわち、哲学、道徳、芸術、宗教を通して顕現し、地上に実現することにあるのである。

 人間存在の無常を観ずることも真理ではあるが、人間存在の実在を観ずることこそ、大真理であるのである。

 しかし、世の多くの方は、無常の真理を悟れていない方が多いのである。まずは、こうした方々に、基礎的な真理である無常の真理を述べ伝えることが、真なる哲人の第一の使命であろうと思う。

 そして、本当の意味で最高の大真理である実在の真理を述べ伝えることは、哲学者の最高の使命であろう。かかる大真理は、悟りの実感として自得しておられる方は、非常に少ないのである。

 この大真理を悟れば、人生のすべては、世界のすべては、ありとしあらゆるものが光輝いて観じられ、最高の幸福感に満ち満ちた人生を生きることができるのである。人間にとって、かかる大真理は、最高の福音なのである。

 人間の使命とは、自己の内の内なる永遠なる実在、永遠なる理念を追求し、磨き、顕現することである。真なる理念を、善なる理念を、美なる理念を、聖なる理念を、それぞれ、哲学、道徳、芸術、宗教などを通して顕現してゆくことにあるのである。

 永遠こそ我らが目差すものであり、永遠こそ我らが実現すべきものである。

 我らは、無常なるこの地上の世界にあって、永遠なる実在を、永遠なる理想を実現してゆく使命を有して、今ここにあるのである。永遠の存在としてあるのである。この真理を万人のものにすることこそ、人類の理想なのである。以上である。