理念哲学講義録  天川貴之

真善美聖の「理念哲学」の核心を、様々な哲学的テーマに基づいて、わかりやすく講義したものです。

第2章「運命と自由意志について」第6節(2)    天川貴之

 

 一方、本来、理性を有するにもかかわらず、世界に悪と見えしものが数多く創造されているのは、ある意味では、人間に自由意志がある証拠であるが、人間独自の罪であるといえよう。

 しかし、理性的人間は、本来理性に向かうように、「かくあるべし」の本性を有しているのである。理性に合致した生き方をすることが、本来の姿なのである。

 にもかかわらず、地上世界において、感性的なものに囲まれ、次第に理性の存在を忘れ、感性的人間、本能的人間になってしまうのである。そして、肉体我に執われた結果、自我中心のものの見方をし、争いがおこり、数多くの悪がおこるのである。

 一方、理性的な自覚は、万物同胞との愛につながり、かかる博愛は、我を虚しくし、平和をもたらし、数多くの善をなすことができるのである。

 故に、万物の霊長である理性的人間は、自由意志を用いて、真に深く理念に則った人生を送り、素晴らしい世界を築いてゆかなくてはならない。

 人類には、自由意志を通して、最高最大最深の理念的顕現たる文化・文明を創造してゆく使命が与えられているのである。

 一人一人の人間の内なる理念が目覚め、真に顕現する時、理念の顕現せる世界が実現するのである。それこそ、人類の目差すべき究極の目標であろう。

 かかる人類の大輪の華を咲かせる道程においては、幾つかのシナリオがあるであろう。人類の運命にも、いくつかのシナリオがあるであろう。

 その中において、今後の人類の未来を、人類の運命を力剛く開拓してゆくのは、我々自身である。我々の自由意志そのものである。その崇高なる自覚と決意と信念をもたなくてはならない。

 大いなる超越的実在と共に、我々は期待されている最高の運命のシナリオを演じ、最高の一大芸術を開花させてゆきたいものである。

 

(つづく)