第3章「快楽と幸福について」第5節 天川貴之
第5節 最高の理性的幸福について
では、理性的幸福とはどのようなものであろうか。私は、理性的幸福の追求とは、真の追求、善の追求、美の追求、聖の追求に要約できると考えている。
まず、真の追求、哲理の追求は、人間の心を飛翔させ、理法の世界の悦びを得ることが出来る。これも人間にとって最高の幸福である。
次に、善の追求、特に愛の実践は、人間の心に最高最大最深の心情を湧きあがらせ、大いなる歓喜に包まれることができる。これも、人間にとって最高の幸福である。
次に、美の追求であるが、これは、感性の世界と捉えられることが多いが、本能的感性と区別し、理性の一形態としての感性を念頭においたものである。かかる理性によって美を直接把握する幸福は、人間にとって最高の幸福である。
さらに、聖の追求、これも直感的理性の発露として考えられるものであるが、人間は、永遠なるもの、無限なるものと一体感をもって生きることによって幸福になることができる。これも、人間にとって最高の幸福である。
このように、理性的幸福の原理として、真・善・美・聖の追求を挙げておきたい。
(つづく)