第3章「快楽と幸福について」〔注解的続編〕(6)
〔注解的続編〕(6)
金銭欲については、現代社会においては、貨幣経済となっているが故に、地上的なる欲望の対象が金銭そのものになることが多い。
しかし、金銭そのものに価値があるかといえば、そうではない。金銭を通して何をせんとしているのかが大切なのである。
故に、金銭を、例えば自己の教養を磨くために使うのであれば、理性を輝かせることになるので、価値の高い生き方であるといえるし、逆に、足ることを知らぬ衣食住の欲や性欲などのために使われたとするならば、それは、欲望を助長させただけであるから、あまり価値の高い生き方であるとはいえないであろう。
このように考えてみると、欲望を助長させるような金銭欲に生きるよりは、清貧に生きた方がよいといえるし、理性を顕現させるような生き方のためになら、清豊もよいといえるのである。
清貧に生きる道も、清豊に生きる道も、どちらも素晴らしい点がある。
故に、金銭があれば、清豊の生き方をし、なければ、清貧の生き方に足ることを知り、結局のところ、理性を輝かせる一条の大道を歩めばよいのである。
(つづく)