第4章「存在と実在について」第2節 天川貴之
第2節 通常の認識について
まず、第一段階としては、我々の通常の存在の認識である。
我々は、地上的なものに執われた認識をしている。
例えば、まず何よりも物質に執われ、この世的なる存在が全てであるかのような世界観に執われ、また、地上的な欲望としては、物欲・金銭欲・名誉欲・地位欲・性欲などに執われている。
こうした、物質的な欲望に執われて生きているのが、我々の通常の姿である。この状態は、プラトンのいう、物質の束縛の内にある認識といえよう。
しかし、この状態においては、この世的なるものから離れた天上的なるものを認識することはできないのである。
いわば、物質的なる欲望への執われによって、天上世界を認識する心の望遠鏡に黒いフィルターがかかっているようなものである。
あくまでも、この段階において実在として認識されるものは、物質的なるものであって、あたかも、それが常にあるものであり、最もリアリティーのあるものとして認識されるのである。
(つづく)