理念哲学講義録  天川貴之

真善美聖の「理念哲学」の核心を、様々な哲学的テーマに基づいて、わかりやすく講義したものです。

第6章「厭世観と楽天観について」第4節(2)

 

 さらには、人生の本質、世界の本質を深く深く探究すると、人間の本質にも光輝く理念があり、世界の本質にも光輝く理念が横たわっていることが認識されてくる。

 これらの光輝く理念を観ずるためには、まず何よりも、自己の内なる光輝く理念を発見し、磨き出し、顕現させなくてはならない。

 真に自己の理念が顕現した時、初めて、人生の理念が観え、世界の理念が観え、その結果、人生と世界が光輝いて観えてくるのである。

 この段階に達した代表的な思想家として、エマソンが挙げられる。

 彼の楽天的な自己観、人間観、人生観、社会観、自然観、宗教観などは、すべて自己の理念を光輝かせることによって洞察したものなのである。

 また、すべてのものの根底に理念を観ずることが出来たヘーゲルもまた、徹底した楽天観であるともいえる。

 彼もまた、内なる理念を光輝かせることによって、すべてのものを射照らし、観ずることができた哲学者なのである。

 この段階の楽天観は、真に底の深い楽天観であり、本物の楽天観であるといえよう。

 それは、人生と世界に対する絶対肯定の時代である。この段階においては、真なる自己信頼に基づく法悦的幸福の人生を送っている人が多い。

 このように、人生と世界を真に深く深く洞察したならば、絶対的楽天観へと到達するのであり、人生と世界の本質は、限りなくよきものであるという真理を体得することができるのである。