理念哲学講義録  天川貴之

真善美聖の「理念哲学」の核心を、様々な哲学的テーマに基づいて、わかりやすく講義したものです。

第8章「現象と理念美について」(4) 天川貴之

 第4節 エマソン哲学と理念認識について(1)

 

 近代ロマン主義の芸術的思想家にエマソンがいる。彼は、何よりも自然に美を見い出し、高度な精神性を見い出している。

 彼の思想の中においては、自然を、絶対者の象徴と把握している。そして、自然の象徴を解読してゆくことによって、自然を通して、絶対者の把握に到ることができると述べられている。

 これもまた、自然を、自然の現象のまま認識することではない。自然の象徴性を解読するということは、自然の奥なる理念を認識するということである。

 エマソンは、まず、人間の奥には、無限なる精神性があるのであると直観した。それは、理念(真善美聖)であり、絶対者そのものである。この人間の内なる理念こそが、自然の象徴を解読し、自然の奥なる理念を洞察することができるのである。

 すなわち、人間の奥なる理念美が自然の奥なる理念美を認識するので、人間の内にも自然の内にも、現象を超越した理念美の実在を直観したのである。

 このように、自然の奥には理念が実在し、真善美聖のすべてが実在するのである。例えば、真の中にも、哲学的真理や宗教的真理や道徳的真理や科学的真理などがあるが、これらのものが、自然の理念を認識することによって把握されるのである。

 故に、自然とともに生きることによって、哲学者にインスピレーションが与えられ、宗教家に啓示が与えられ、芸術家に深い感動が与えられ、科学者にも新しい発見が与えられるのである。このような高度な創造力の源には、自然があるのである。

 

(つづく)

 

 

By 天川貴之