第8章「現象と理念美について」(9) 天川貴之
第8節 あらゆる芸術の頂点としての理念美について
そして、同一の理念美を、絵画を通しても、彫刻を通しても、また音楽を通しても表現できるということは、絵画も彫刻も音楽も、同一のものの異なった顕れであるということができるのである。
故に、すべてのあらゆる芸術の道は一なるものであり、一なるものに通じるといえるのである。
その一なるものとは、理念美であり、イデア美である。
古今の哲学者達は、各々の芸術の形態を洞察して、その芸術をジャンル別に高下の序列をつける試みをおこなっているが、本来すべての芸術は、どの道にも、等しい段階と頂点があるといえるのであって、どれが優れているとはいえないのである。
絵画も究めれば、彫刻を究めたのと同じ高さにゆきつくし、音楽も究めれば、彫刻を究めたのと同じ高さにゆきつくのである。
このことを、日本では、「道」という表現が使われている。
「茶道」にしても「華道」にしても「歌道」にしても、すべて道とつくものは、その段階と個性の差があり、その頂点に、究極の理念美(絶対者)があるといえるのである。
(つづく)
by 天川貴之