理念哲学講義録  天川貴之

真善美聖の「理念哲学」の核心を、様々な哲学的テーマに基づいて、わかりやすく講義したものです。

第9章「経験と叡智的直観について」第3節(2)    天川貴之

 第3節 知的直観について(2)

 

 言葉で現しているものもロゴスであるならば、言葉で現さざるものもまたロゴスであり、言葉の有無を越えた永遠普遍のロゴスに到達するということが悟りの道であり、また、哲学的叡智の開闢の道であるわけである。

 それを、日本において、主に止揚しようとされた哲学を構築された源にあるのは、西田幾多郎の哲学ではないかと思う。

 カント、ヘーゲルに受け継がれたところの、西洋の伝統的な思考形態、論理的思考方法というものを踏まえた上で、尚かつ、禅に参入し、深い宗教的経験を悟得し、言葉や論理では捉えられないところの直観の世界を真に知った方が、その両者を止揚せんとして、西田哲学という形で、その東洋の思考方法を止揚するはしりとなる哲学を創られたのである。

 その中で述べている「知的直観」という概念は、これは、そもそもは、悟りの言葉である。真理そのものを直観的に悟ること、これを知的な面から行うことを、「知的直観」と云う。

 真、善、美、聖という主な個性に分かれた一なる理念は、真理としても知的に直観され、善としても道徳的実践的に直観され、また、美としても芸術的に直観され、また、聖としても宗教的に直観されるものであり、こうしたものを総じて、「理性的直観」と呼んでもよいのではないかと思う。

 

(つづく)

 

 

 

 

By 天川貴之