第9章「経験と叡智的直観について」第5節(1) 天川貴之
第5節 直観と論理について
論理をただ単に積み重ねてゆくだけでは、本当の知的進歩というものもあまりないのである。
様々な論理学がある。アリストテレスの形式論理学もあれば、ヘーゲルの弁証法もある。
けれども、その論理の普遍的構造は一つであり、その論理というものは、実は、確実な積み重ねのようにみえて、その論理を打ち建てる根本動機になっているところのもの、論理的思考を真にイノベーションしてゆくところのものは、多くの場合、直観なのである。
それを、インスピレーションと呼ぶ方もいる。そのような、限りなく直観的なるものが、本当の意味で論理を進化発展させる源であると言えるのである。
まず直観があって、それを翻訳するために、論理的思考としての思索があると言っても過言ではない。
即ち、思索というもの、哲学というものは、「直観」と「論理」が必要なものであり、この直観が鋭いだけの哲学者でも充分ではないと言えるが、論理だけの哲学者もまた、充分ではないと言えるのである。
(つづく)
By 天川貴之