理念哲学講義録  天川貴之

真善美聖の「理念哲学」の核心を、様々な哲学的テーマに基づいて、わかりやすく講義したものです。

第9章「経験と叡智的直観について」第7節(1)    天川貴之

 第7節 カント哲学の本質とその限界について(1)

 

 現代の多くの知識人の方々が、どのような観点から、真理の獲得というものを位置づけておられるかということを大雑把に把握した場合、よく取られている立場が、カントの立場ではないかと思う。

 カントの哲学とは、果たして学問の対象として把握するものは、どのような対象であるべきであるのかということを深く認識しようとし、主に、デカルトに始まる人間という立場に立った合理論を、イギリス経験論の最も懐疑的なヒュームの経験論の立場に影響を受けて、批判という切り口をもってそれを捉え直し、合理論と経験論の止揚を図った哲学であって、近代の思考、もしくは歴史を形創ってゆくための屋台骨となった考え方であろう。

 しかし、私達が現代の歴史というものを考え、更に、新時代のビジョンを打ち出してゆくにあたって、このカントの思考方法というものを根底から問い直し、そして、その遺産を受け継ぎながら、その思想が及ぼした影響の功罪を検証し、それを新時代へと繋げてゆくという哲学を、新時代の精神として打ち建てなければならないのである。

 

(つづく)

 

 

 

 

 by 天川貴之