第9章「経験と叡智的直観について」第7節(5) 天川貴之
カント自身は勿論、実践理性批判の中で述べられている通り、理念を前提としているから、そこから要請されるところの人間観、世界観というものを構築している。
理念、もっと言えば、また、霊的現象というものも含まれるが、このようなものを前提としなければ、カントの実践理性批判は著述できないし、理解できない。
したがって、その真髄において、カントはスウェーデンボルグというものを認めていたと理解して良いだろう。そのようなことも、おそらくあるであろうという認識は持っていたであろう。
そしてまた、実践理性批判を、純粋理性批判、また判断力批判と共に著述することによって、カントは、宗教の領域にもその場所を開け、学問が、その学問としての領域を、その学問の出発点である哲学が、哲学としての領域を、ここからここまでであるという可能性と限界を、近代的要請の立場から規範として打ち建てたのである。
(つづく)
by 天川貴之