理念哲学講義録  天川貴之

真善美聖の「理念哲学」の核心を、様々な哲学的テーマに基づいて、わかりやすく講義したものです。

第9章「経験と叡智的直観について」第7節(6)    天川貴之

 第7節 カント哲学の本質とその限界について(6)

 

 その不可知論を逆手にとって、カント以降、そのような理念の世界が存在しないというふうに流れ、解釈したのは、カントを卑小化し、カント哲学を、むしろ価値無き哲学としている考え方である。

 カントの本心というものは、理念が存在するという確信から成り立っているわけである。それは、プラトンと同じ立場であるし、キリスト教や、仏教や、その他のものとも一致する。

 このカント哲学の立場を受けて、オカルトというもの、例えるならば、啓示というもの、神示というもの、また様々な霊的現象というもの、こうしたものに対して、オカルトという位置づけをなし、そして、それは本当だとも言わない、そして嘘だとも言わない。懐では、そういうこともあるだろうと思いながらも、自分自身の言論人、学者、哲学者の立場からは解らないという答えを出す。

 これが、現代におけるカントの正当な考え方を受け継ぐ立場ではないかと思うが、それだけでは、新時代の精神というものが開けてこないのも事実である。

 

(つづく)

 

 

 

 

by 天川貴之