第9章「経験と叡智的直観について」第8節(1) 天川貴之
第8節 叡智的直観について(1)
解らないということが解っただけで、人生というものは開けない。
解らないという謙虚な立場から出発しながらも、無知の知から出発しながらも、本当の叡智を求めて、本当のイデア、理念を求めて、限りなく飛翔してゆくのが、哲学者の使命であり、学問の使命であり、学者の使命であり、また、言論人、思想家の使命であろう。
即ち、理念への飛翔、叡智への飛翔というものを、私達は、これからの時代において、更に深く探究してゆかなければならないのであり、そのような方法論を、むしろプラトンの哲学を引き継いだプロティノス的立場から新しい切り口を見出せるのではないかと思うし、その切り口を見出すことによって、仏教の般若の考え方、また、東洋の伝統的な思考方式を融合する潮流を創り出すことができるであろう。
これからは、解らないことは解らないと言うという、知的廉直の立場を取りながらも、自分自身に正直であると共に、真理に正直であらなければならない。
真理に正直であるということは、真理を直観的に悟る精進努力をしてゆくということであろう。
(つづく)
by 天川貴之