理念哲学講義録  天川貴之

真善美聖の「理念哲学」の核心を、様々な哲学的テーマに基づいて、わかりやすく講義したものです。

第9章「経験と叡智的直観について」第9節(2)    天川貴之

 第9節 統合哲学の時代(2)

 であるから、身近な例を挙げれば、経験も大切である。そして、知識も大切である。

 しかし、経験や知識だけですべてを推し量ってはならない。

 経験というものは有限であり、個別的であり、また、知識というものも過去そうあっただけであり、また、それがすべてではなく、知識と経験の両者を合い持っている方も、叡智的直観という観点から、無限の人間理性の開拓の余地があるのであり、その意味において、心を白紙にして、叡智的直観を磨くという姿勢を取らなければならないのであり、また逆に、若くして経験もあまりなく、また知識もあまりない方であっても、叡智的直観というものは、老若男女にかかわらず、人間に備わっているところの生得知であるから、このような生得知であるところの般若が真に開発され、目覚め、そして、年若く、知識経験を超越して、真理そのものの全貌を掴み、新時代の精神、世界精神を理念として掴み得たものを尊重し、敬ってゆく態度を取らなければならない。

 それは、何故に必要であるかというと、理念への尊敬の念の故に必要なのである。

 理念を尊重しようと思えば、叡智的直観を尊重しなければならない。そうしなければ、理念というものを真に生かすことはできないのである。

 

 (つづく)

 

 

 

 by 天川貴之