第10章「時空と絶対無について」第2節(1) 天川貴之
第2節 科学の立場から「無」を探究する(1)
「無」というものは、科学的な立場から説明すると、「ゼロ」という概念に相当する。ゼロというものが無であり、無を数学的なる悟りをもって表現したものが、ゼロというものである。
数字というものは理念であり、一、二、三、四、五、六、七、八、九、十、とあるように、このような数字は、現象としては何処にも存在しない。
一と見えしものも、分割すれば一ではなく、厳密な一は、この地上の現象の中には存在しない。現象を認識した上で、その背後にある理法を認識して初めて、数字というものが顕われるのである。
即ち、数学は、理念界の表現であり、法則界の表現である。即ち、現象を理念によって説明し、理念が展開して多となって現れた現象を統括する立場が理念である。それが、数学となって顕われたものが、現在の数字として表象化されているのである。
であるから、我々は、理念を知るということが、数学を知るということと同じであり、哲学をするということが、数学をする、科学をする、ということと同じであるということに目覚めなければならない。
(つづく)
by 天川貴之
(JDR総合研究所・代表)