第10章「時空と絶対無について」第4節(1) 天川貴之
第4節 「無」の本質について (1)
ところで、この「ゼロ」というものは、如何なる本質を持っているのかということを考えた時に、これは、時間もまた無であり、空間もまた無である所の「場所」である。
そして、時間の本質と、空間の本質を真に洞察し、その両者を統合する唯一の立場が、この「無」という立場であるということである。
ゼロという中心を持たずして、あらゆる時間の営みもなく、空間の営みもない。
無というものだけであるならば、ありとしあらゆるものは存在しない。無である。
それは、永遠普遍にある所の絶対者の意識である。無からすべては始まり、無にすべては還り、その無の中にはすべてがあり、すべてを包括し、すべてを可能態として持っているものである。
未だ現象として、また、理念として現われていないものも、無の中にはすべてある。
無は、何もないものではない。それは「有無の無」である。
有無を超えて、無というものは、すべてを含んでいるものである。それが、時間、空間の形式を伴って現われていないだけなのである。
(つづく)
by 天川貴之
(JDR総合研究所)