理念哲学講義録  天川貴之

真善美聖の「理念哲学」の核心を、様々な哲学的テーマに基づいて、わかりやすく講義したものです。

第3章「快楽と幸福について」第6節          天川貴之

 第六節  哲人の使命について

 

 数多くの方々は、理性に目覚めることなく、快楽の濁流に流されながら生きている。苦しみの生を生きている。苦しみとは自覚せずに、緩慢なる生命の自殺を行っている。

 快楽の華やかな明るさは、楽しそうな騒がしさは、実は偽りである。偽りの仮面を顔にかざった人々が、迷いのダンスを踊っているのである。

 人生という貴重な時間の流れが無駄に費やされてゆく。何のために生まれてきたのか。何のために生きてきたのか。その深い意味を考え思索することなく、偽りの中に生きている。

 迷いの濁流の中で、一人一人の方々の良心の声が聴こえてくる。理性の叫びが聴こえてくる。しかし、その声は本人達には届かない。理性に目覚めたる哲人達の魂にのみ響く。

 その同胞達の悲しみの声、苦しみの声が真に聴こえたならば、真なる哲人達よ、決して座していてはならない。一人でも多くの人々に、自らの後ろ姿と理性の幸福の実感をもって、「真理」を述べ伝えてさしあげなければならない。

 「人々よ、あなた方は理性の眼を取り戻しなさい。真に目覚めなさい。そして、己が偽りの仮面をとりなさい。さすれば、あんなにも華やかにみえた快楽が、実は、人生の暗黒の苦であったことがお分かりになられるはずです。早く、快楽の鉄鎖から自由になりなさい。苦界から脱却しなさい。さすれば、偽りではない真実の世界が観えてこられることでしょう。真実の世界とは、理性の世界、真善美聖の世界です。かかる理念を追求することによって、最高の幸福を獲得して下さい」と。

 

 (つづく)