理念哲学講義録  天川貴之

真善美聖の「理念哲学」の核心を、様々な哲学的テーマに基づいて、わかりやすく講義したものです。

第3章「快楽と幸福について」〔注解的続編〕(8)

 〔注解的続編〕(8)

 

①  「快楽が苦である」という見解は、仏教の中に流れている思想と相通ずるものがある。仏教では、人生について、「一切皆苦」といわれている。ここでいう人生とは、悟りのない「迷いの人生」のことである。すなわち、悟りによって解脱しなければ、本当の意味で幸福な人生は送れないといわれているのである。この「迷いの人生」の一形態として、私は、「快楽を追求する人生」と呼んでいるのである。

 

②  仏教でいう四諦八正道は、「苦諦」(苦の真理)から始まる。この真理を悟ることを、私は「快楽は苦である」と悟ることと述べているのである。

 

③  四諦八正道を述べてゆくと、次に、集諦(原因の真理)にいく。この真理を悟ることを、私は「快楽の追求こそが苦しみの原因である」と悟ることと述べたのである。

 

④  次に、滅諦(理想の真理)にいく。この真理を悟ることを、私は「理性によって永遠無限の幸福を得ることができる」ことを悟ることと述べたのである。


⑤  最後に、道諦(方法の真理)にいく。この真理を悟り、実践することを、私は「理性によって快楽にストイックになり、真善美聖の四つの道を理性的に追求することが幸福への道である」ことを悟り、実践することと述べたのである。

 

⑥  道諦でいう「道」とは、仏教では八正道のことをいうが、私は、理性的ストイシズムと理性的四正道(真善美聖)に置き換えている。というのは、八正道の本質も、限りなく理性的な智慧の眼をもって煩悩を滅却してゆくことにあり、本質が似ているからである。

 

⑦  前述のように、本論文の基調には、ストア哲学的な思想が流れているが、その本質は、仏教と非常に似ている。例えば、仏教でいう「戒定慧」の三学の修行論にしても、ストア哲学のストイックなライフスタイルのもとに(戒)、瞑想的な時間を大切にし(定)、理性による智慧を得ていく(慧)という修行論と本質は同じである。

 

 (つづく)