第4章「存在と実在について」第6節(1) 天川貴之
第6節 心の内奥なるイデアを顕現せよ(1)
心の内奥には、あらゆるものがある。すなわち、地上のありとしあらゆるものの原型が、心の内奥にはあるのである。その意味で、地上のありとしあらゆるものは、心の世界の影であるともいえるのである。
心の内奥の中心には、プラトンのいう「善のイデア」といえるものがあり、心の中には、実在としての愛も夢も情熱も慈しみも感謝も知恵も豊かさも勇気も、すべての精神的徳があるのである。
その無数無限なることは、地上の存在との比ではないのである。地上世界には、その中のほんの一握りの理念の種しか華開いていないのである。
こうしたイデアを源とする精神的なるものの中にこそ、真なる実在性があるとするならば、地上世界においても、イデア的なるものに重点をおいて生きてゆかなくてはならない。
地上的なあらゆることは、実在とみえて、実は変転してゆく存在にすぎず、天上的なあらゆることは、夢幻の存在とみえて、実は確固不動の実在なのである。
故に、我々は、真実在たるイデアを中心に掲げ、その属性たる愛や夢や情熱や慈しみや感謝や知恵や豊かさや勇気などの精神的徳を何よりもの心の拠り所とし、地上世界にあって地上世界に染まらず、物質世界にあって物質世界に染まらず、心の内奥なる天上世界を、天上のイデアを、この地上に顕わしてゆこうではないか。
(つづく)