理念哲学講義録  天川貴之

真善美聖の「理念哲学」の核心を、様々な哲学的テーマに基づいて、わかりやすく講義したものです。

第4章「存在と実在について」第6節(2)    天川貴之

第6節  心の内奥なるイデアを顕現せよ(2)

 
「その人の考えていることが、その人自身である。」とは、マルクス=アウレリウスの言葉であるが、その人がイデア的なるものを常に考えているとするならば、それだけその人は、イデア的人間として生きているといえるのである。

 逆に、その人が物質的なものを常に考えているとするならば、その人は、物質的人間として生きているといえるのである。

 現代は、特に物質的人間が多くなっているようにみうけられる。それはそれだけ、この地上の国が、物質的な国となっているということであろう。

 しかし、イデア的観点からみれば、物質など夢幻の如きものであって、「本来ない」ものなのである。

 物質的人間も、物質的な国も、地上の人々の認識の誤りによって、一過的に現れているにすぎないものなのである。それらは、真の意味では、目の錯覚なのである。

 絶対者は、本来、イデア的人間のみを創られたのである。地上の国とは、本来、イデアに目覚めた人々の住むべきイデアの国なのである。

 これより後、私達は、一人一人がイデアの思想に触れて、目の錯覚を覚まし、イデア的人間として新生し、イデアの属性である愛や夢や情熱や慈しみや感謝や知恵や豊かさや勇気などの精神的徳を身につけ、こうした素晴らしい理念で地上を満たし、イデアの国を創ってゆこうではないか。

 地上におけるイデアの勝利こそ、哲学の勝利であり、哲学の勝利こそ、究極の実在の正義なのである。

 

 (おわり)