第4章「存在と実在について」〔注解的続編〕(1)
〔注解的続編〕(1)
① 本論文の特徴の一つは、プラトンのイデアの世界を、心の内奥の世界と規定している点であろうと思う。
② かかる観点は、仏教哲学における「三界は唯心の所現である。」という考え方と似ている。
仏教哲学においては、本来的に天国も地獄も心の所現であり、心の内に天国も地獄も存在することがいわれている。
そして、仏もまた、心の所現せるものであり、いわば、心の内奥に、イデアの世界にあたる仏の世界があると考えられているのである。
故に、密教でいう心の内奥なる胎蔵界であるとか、金剛界であるとかいわれているものは、哲学では、イデア界に相当するのであると考える。
③ イデアの世界は、キリスト教的にいえば、「神の国」にあたると考えられるが、その「神の国」は、イエス・キリストが聖書の中に説かれているように、「汝の心の内にあり」なのである。
④ 本論文の形而上学上の中心である「善のイデア」が、ここでは、仏教における「根本仏」、キリスト教における「根本神」にあたる。
⑤ イデアの世界が心の世界であるとすると、心理学との接点が重要になってくる。
例えば、ユング心理学などでは、表面意識を超えた潜在意識を大切に考えるが、この潜在意識における実在こそがイデアなのであり、それは、ユングの概念である「元型」の源となるものである。
(つづく)