第5章「唯物学術と理念学術について」(7)
〔注解的続編〕(1)
一、「理念哲学」について
• 「理念哲学」の最大の課題は、ギリシャのイデア哲学を源とする存在論哲学と、ドイツ観念論哲学を源とする認識論哲学との統合であろう。
• 「イデア」は、カント哲学においては、ほぼ「物自体」にあたる。カントは、認識とは、感性的直感と悟性的思惟によって成立するので、感性的直感のない「物自体」の思惟を空虚であるとして、認識されないものとされたのである。
• しかし、そもそもプラトンは、現象を「イデア」の影として考えられたわけであるから、現象を通して、その背後にある「イデア」(理念)を思惟することはできる。
例えば、スウェーデンボルグのように超現象的な霊存在を認識することは、一般的に理性の能力の範囲を超えているとしても、現象として認識しうる自然や世界史や人間や大宇宙等の根底に存在する「理念」については、認識できるはずである。
• このように、プラトンのイデア論を正とし、カントの物自体論を反として、合の立場に立つのが、ヘーゲル哲学の理念哲学である。この理念哲学を土台にして、新時代に向けて、新しい理念哲学を構築していきたい。
• 理念の奥に、すべての個性的理念を包む、絶対無の如き大理念を想定している。それは、あの大宇宙の意識のように、自らは無にして、あらゆる個性的な星々を輝かせる大いなる場となる大理念である。
こうした考え方も、西田哲学をも取り入れた新しい理念哲学の切り口であるといえよう。こうしたすべての個性を活かす寛大なる理念が、新時代のすべての学問領域に必要であると思う。
(つづく)