第4章「存在と実在について」〔注解的続編〕(4)
〔注解的続編〕(4)
⑭ 執着の対象とされていた物、金銭、名誉、地位、異性なども、認識主体の境地によって、存在価値が変わってくるものである。
⑮ 第一段階は、「すべてのものは自分のものである。」と観じている境地である。これは、執着の認識であり、このように観られたすべてのものは、欲望の対象としてマイナスの価値を有している。
⑯ 第二段階は、「すべてのものは自分のものではない。」と観じている境地である。これは、無執着の認識であり、前者を正(単純肯定)とすれば、反(単純否定)という一八〇度回転した境地であるといえよう。このように観られたすべてのものは、プラス・マイナス・ゼロの価値を有している。
⑰ 第三段階は、「すべてのものは、絶対者のものである。」と観じている境地である。これは、イデア認識の境地であり、前二者を正反とすれば、合(絶対肯定)という、いわば、三六〇度転回した境地であるといえよう。このように観られたものは、プラスの価値を有しているといえる。
⑱ イデア認識の境地に立って、「物も金銭も名誉も地位も異性も、すべてのものは、絶対者から預かっている公のものである。故に、すべてのものを絶対者の御心に適うように使わせていただこう。」というように観じてゆけば、物も金銭も名誉も地位も異性も、すべてのものがイデア価値をもって、実在として光輝いて観えてくるのである。
その時、その方の周囲は、すべてのものが光輝き、その身そのままで、光明荘厳たるイデア界が現成するのである。
(つづく)