第5章「唯物学術と理念学術について」(9)
【注解的続編】(3)
四、「理念政治学」について
五、「理念法学」について
• 理念政治学とは、国家の意志決定において、理念に正しさの根拠を求める政治学である。
• 故に、理念を真に認識できる哲人政治家によるリーダーシップが待望されるのである。
• 理念法学とは、法律の中に、自然法の源である理念の法を取り入れてゆくことである。このことによって、法は、真なる正当性と普遍性を獲得できるのである。
• 現代においては、正義とは、民主主義的原理にのみ置かれる傾向があるが、理念こそが、真なる正義の源なのである。
• 理念政治学、理念法学の実践的変革者は、「理念政治家」や「理念志士」であるとすれば、これは、理念経済学に対する「理念経営者」に対比されるものであろう。
共に新時代を築くべき理念的実践者であり、その意味で、かかる方々に対する塾のようなものを、かつての吉田松陰の塾や石田梅岩の塾のように、創ってゆかなくてはならないであろう。
• ルソーは、社会契約論の中で、「市民宗教」の必要性を訴えられているが、ヘーゲルもまた、国家独特の民族宗教の必要性を訴えられている。
そして、それらは、自由の原理と矛盾するものではなく、むしろ、自由の原理を実現し、確立するために必要なものであるとされているのである。
• 国家宗教とは、宗教の問題というよりは、むしろ、「理念政治学」「理念法学」の問題である。
理念という人為を超えた普遍の法を、政治と法の中に実現してゆくことによって、実質上、国家宗教を打ち立ててゆくことこそ、近代精神の究極にあったものであり、未来精神の鍵でもあろう。
• 国家に理念が顕現することによって、国家は、その本来の崇高なる生命の息吹、使命の息吹を吹き返し、光輝く生命体となるのである。これを、理念国家有機体説という。