第5章「唯物学術と理念学術について」(8)
〔注解的続編〕(2)
二、「理念道徳学」(理念倫理学)について
• 「理念道徳学」は、かつて道徳形而上学を打ち立てられたカント哲学やフィヒテ哲学の延長上に理論構築してゆけるものであろう。
• すなわち、「叡知界」(理念界)に属する各自の普遍の道徳律(理念の法)に従って自律する時に、善が生ずるという思想である。道徳思想にも様々なものがあるが、この思想が、「理念道徳学」に限りなく近いといえるであろう。
• ただし、各自の内なる理念の法(普遍の道徳律)に段階の差と個性の差を認めてゆくことは、さらに必要であろうし、「外なる法と自律」の問題や、「精神の法則と自由の意志」の問題などについては、さらに探求の余地があるであろう。
三、「理念美学」について
• 美の根源とは、天上の美の理念にあるのであり、地上に顕れたる美とは、その投影なのである。
• 故に、地上の美を通して天上の美を想起し、想起したものを昇華して、天上の美、天上の芸術を地上に創造していくのが、理念芸術なのである。
• 美にも段階の差があり、理念美を頂点とした秩序があるのであり、絶対的美というのは実在するのである。
• 理念の美を認識するのは、人間の内なる理念であるが、これは、本能的感性とは区別した理性の一形態としての感性である。
(つづく)