第5章「唯物学術と理念学術について」(12)
【注解的続編】(6)
九、「理念物理学」について(1)
(「相対性理論」と「絶対性理論」について)
• ニュートンは、「絶対空間」「絶対時間」を想定して古典物理学を創られたが、アインシュタインの出現によって、あらゆる空間と時間は相対的なものにすぎず、基軸の変化に伴って変転してゆくとされた。
• これは、物理学的縁起の思想、空の思想であって、いわば、絶対空間や絶対時間なる「自性」はなく、すべての空間と時間は、「依他起性」、すなわち、他のものとのかかわりによって、一時的な性質を有したにすぎない相対的概念とされるのである。
• しかしながら、仏教に、空の奥に「仏性論」が存在するように、相対空間、相対時間の奥には、確かに「絶対空間」「絶対時間」が実在するのである。
そもそも、数学や物理学は「理」を扱ったものであるから、その源は「理念界」にあるのであって、理念界を中心にして考案してゆかなくてはならないのである。
• 故に、今後、ニュートンの時空間を正とし、アインシュタインの時空間を反とした、新しい合の立場の「理念物理学」が出現してこなくてはならないのである。
• アインシュタインの時空論は、現象界における限りにおいて真理であるが、理念界において偽である。
一方、ニュートンの時空論は、理念界においては真理ではあるが、現象界においては偽である。
すなわち、理念の時空論を根源として、現象の時空論をその投影として説明する理論こそが、「理念物理学」の立場なのである。
さらに、理念を「一者」として、それが、「多」なる時間空間に分かれて、すべての存在が生じているという世界観も、「理念物理学」のテーゼである。
すなわち、一なる理念の時間空間の自己限定によって、各次元の時間空間が生じ、多様なる世界が生じている。
(つづく)