理念哲学講義録  天川貴之

真善美聖の「理念哲学」の核心を、様々な哲学的テーマに基づいて、わかりやすく講義したものです。

第5章「唯物学術と理念学術について」(11)

 【注解的続編】(5)

 

七、「理念経営学」について

 

• 理念経営とは、経営哲学に基づいた経営であり、その哲学は、理念哲学の実践哲学であるが故に、それに則った正しい経営となるのである。

• 理念経営者の課題は、いかに理念価値の高い理念商品を創るかであり、また、従業員の内なる理念をいかに光輝かせながら、指導力を発揮するかである。

 

 


八、「理念教育学」について

 

• 「理念教育学」とは、各自の内なる理念を伸ばしてゆく教育であり、一人一人の固有にして無二なる個性的理念に着眼する所から、個性尊重の教育、天才教育へとつながってゆくものである。

• ルソーの「自然教育」とは、大自然の内にある理念にかなった教育のことであるから、理念に着眼する限り、近代的教育原理の精神と両立し、さらに、その奥にあるものへの探究につながってゆく。これは、ルソーの「自然芸術」にも同じことがいえる。

• 理念教育は、仏教的にいえば般若開発の教育であり、プラグマティズム実学教育は、仏教的にいえば識教育となろう。後者は、例えば基本知識や語学やコンピューター教育等になろうが、これは、前者の下支えとしては大切にするべきである。

• シュタイナーの「霊的教育」の中から、神秘主義的オカルト要素を抑え、客観的な理念を重視している教育が理念教育学であるが、その精神と効果に、同じ本質のものが期待されるであろう。

 シュナイター教育が充分に普遍性をもてなかった理由は、神秘主義的傾向が強く、客観的普遍性がなく、近代の合理主義精神と適合しなかったからであると思う。

• 「理念教育学」とは、仏教の般若教育を根幹とするものであるから、実質的に、近代的要請に合致する形で、宗教教育を行えるものである。

• 「理念教育学」は、自己固有の理念に対する自己信頼の精神、主体性の精神、自律の精神を大切にするので、福沢諭吉的な「独立自尊」の教育理念とも一致するであろう。また、エマソン的「学者」倫理と一致することもいうまでもない。

 

(つづく)