第7章「知識と叡智について」(2)
第2節 知的生活の意義について
このように、知的探究をしてゆくにあたっては、何よりも知の質というのが大切になってくるのである。そして、真なる知を学ぶことによって、真なる知者となってゆくことが大切なのである。
ここでいう真なる知者とは、真に学徳のある方のことである。かつてソクラテスが知徳合一を説いたように、真なる知を修めれば、自ずから真なる徳が身についてくるのである。
故に、真なる知的向上は、真なる人格の向上につながるのであり、真なる知を修めてゆく道は、永遠の大道であるといえるのである。
しかし、現代においては、非常なる知の時代であるにもかかわらず、それらの知の奥にあるものに気づかず、快楽追求を第一とするライフスタイルをもっている方々が多い。
しかしこれは、真なる知を探究する幸福というものを知らないからであるといえよう。真なる知を探究することの悦びに一度目覚めたならば、いかなる快楽も色あせてみえ、知的生活に没頭されるはずなのである。
表面的な味気ない知識ばかりを読んでいると、知的生活がむしろ苦痛にみえてくるのであるが、本物の深き知に目覚めると、知的生活を送ること、知的ライフスタイルをもつことが、何よりもの人間の幸福であることに気づくのである。
このように、真なる知的生活が、人間の真なる幸福の源であるという観点から、多くの方々に対して、真なる知に目覚めることの大切さと、真なる知的生活を送ることの大切さを訴えかけてゆかなくてはならないのである。
(つづく)