理念哲学講義録  天川貴之

真善美聖の「理念哲学」の核心を、様々な哲学的テーマに基づいて、わかりやすく講義したものです。

第7章「知識と叡智について」

第7章「知識と叡智について」(12)天川貴之

【注解的続編】(2) ④ ヘーゲルの絶対知とは、理念(絶対者)と自己とが一体であるという認識であり、真の意味で、理念(絶対者)そのものを知ることである。かかる知は、叡智の段階であるといえる。 彼は、歴史上の全哲学を自己の哲学的体系の中に位置づ…

第7章「知識と叡智について」(11)天川貴之

〔注解的続編〕(1) ① ショーペンハウアーの『思索』や『読書について』などの思索的断片は、主著の『意志と表象としての世界』以上に広く読まれたが、それは、ショーペンハウアーが知恵の段階にある哲学者であり、実践哲学の知恵に長けていたためであろう…

第7章「知識と叡智について」(10) 天川貴之

第10節 新時代を「叡智の結晶」として建設せよ 以上、論じてきたように、知の究極には、知識を超えて、知恵を超えて、叡智が実在するのである。 現代の知識社会を、新時代にむけて、より高度な知の社会へと変革してゆくためには、知恵の価値認識、そして何…

第7章「知識と叡智について」(9) 天川貴之

第9節 叡智を獲得する方法について 第三に、叡智についてである。まず、新しい時代精神を探究してゆくのであるから、今の時代において、当然のこととして前提となっている思想潮流を根源的に問い直してゆくことが大切である。 そして、今後、何百年、何千年…

第7章「知識と叡智について」(8)

第8節 知恵を獲得する方法について 第二に、知恵についてである。一定量の読書をして、ある程度知識的前提が出来たならば、今度は、多読を控えて、自分自身の頭で思索する習慣をつけてゆくことが大切である。 読書をすることは、いわば、受け身な形で著者の…

第7章「知識と叡智について」(7)

第7節 知識を獲得する方法について さて、そこで、こうした知性を獲得する方法についても述べておきたい。 まず第一に、知識についてであるが、始めに、孤独な時間を確保してゆくことが大切である。 独り静かに読書に没頭できるようなライフスタイルをつく…

第7章「知識と叡智について」(6)

第6節 叡智の本質について 第三に、叡智についてであるが、この段階においては、根源的なる思索によって把握している段階であり、概念の奥にある理念を真に認識している、知恵より高次な知であるといえよう。 かかる知に到るためには、心の内なる理念を顕現…

第7章「知識と叡智について」(5)

第5節 知恵の本質について 第二に、知恵についてであるが、この段階においては、思索によって把握している段階であり、概念の内実を真に認識しえている深い内奥なる知であるといえよう。 かかる知に到るためには、心の開拓、精神の開拓が必要であり、内なる…

第7章「知識と叡智について」(4)

第4節 知識の本質について それでは次に、知的探究をしてゆく上で、知性の質に違いがあることを述べてゆきたい。そのことは、知的探究の大いなる指標となることであろう。 知性の質は、知識と知恵と叡智に大きく分かれる。原則として、叡智にゆく程、より高…

第7章「知識と叡智について」(3)

第3節 知的生活の心得について では、知的生活を送り、知的探究の旅に出るにあたっての大切な心得について述べてゆきたい。 まず第一は、かつてソクラテスが説かれたように、自らの「無知」を自覚することである。たとえどのように数多くの知識をもっていて…

第7章「知識と叡智について」(2)

第2節 知的生活の意義について このように、知的探究をしてゆくにあたっては、何よりも知の質というのが大切になってくるのである。そして、真なる知を学ぶことによって、真なる知者となってゆくことが大切なのである。 ここでいう真なる知者とは、真に学徳…

第7章「知識と叡智について」(1)

第1節 真の知と真の知者について 知識と叡智について論じてゆきたい。 現代は、歴史的にみても、非常なる知の時代であって、膨大な量の知識が情報として飛び交っている。大型書店にいけば、毎年毎年、大量の本が出版されては、大洪水の如く氾濫し、すぐ様、…