理念哲学講義録  天川貴之

真善美聖の「理念哲学」の核心を、様々な哲学的テーマに基づいて、わかりやすく講義したものです。

第5章「唯物学術と理念学術について」(16)

【注解的続編】(10)

 

 十四、「理念心理学」について

 

• フロイト心理学は、人間の肉体は、性本能(リビドー)が人間の行動や文化を支配しているとされたが、これは、仏教でいえば煩悩、ショーペンハウアー哲学でいえば、盲目的意志にあたるものであり、人間と世界の真理の一面ではあるが、真理の大局からいうと誤っている。

 あくまでも、人間の行動や文化を支配しているものは、神の理念であり、神から分かれた一人一人の固有の理念なのである。

 そして、我々は、低次の煩悩から解脱し、盲目的意志を否定(ショーペンハウアーの表現)し、固有の理念に基づいて行動し、文化を樹立しなければならない存在なのである。

 この考え方は、ユング心理学の「集合的無意識」や、マズロー心理学の「自己実現」の中にも、その包芽はみられるといえるが、それはさらに、「理念心理学」として発展させられなければならないのである。

 すなわち、心の奥にある理とは「理念」であり、これは、集合的無意識であると同時に、真なる自己なのである。

 

(つづく)