第6章「厭世観と楽天観について」〔注解的続編〕(4)
〔注解的続編〕(4)
⑪ ショーペンハウアーの人間観の非常にニヒルな洞察について検討してみたい。
ショーペンハウアーによると、人間とは絶えざる欲求の状態にあって、それは苦悩である。そして、欲求が満たされると、その充実感はすぐに消えてしまって、また次なる欲求が現れるという。このように、人生は苦悩の連続であると述べられている。
⑫ これに対して、シュタイナーは、『自由の哲学』の中で、希望をもって欲求することは幸福であり、その努力の過程は幸福なものであるとして、ショーペンハウアーの洞察の誤りを指摘している。
⑬ これは、物事に対して光明思想をもって積極的に取りくむか、それとも、暗黒思想をもって消極的に取りくむかの違いであって、前者は、幸福になる精神態度であり、後者は、不幸になる精神態度であるといえよう。
⑭ ショーペンハウアーは、現象の真理に関しては、苦の真理を洞察することにある程度成功しているといえるが、苦の源となる形而上学的原理として、盲目的意志を据えている所に、誤りがあるといえる。
本文にも述べたように、あえて苦の現象界の法則を創られているのは、叡智的意志、叡智的実在なのである。さらに、理念の真理に関して洞察が到っていないことはいうまでもない。
(つづく)