第10章「時空と絶対無について」第2節(2) 天川貴之
第2節 科学の立場から「無」を探究する(2)
科学の世界で問題にされるところの時間論、空間論もまた、哲学で問題にされるところの時間論、空間論と同じである。
一般に、科学は現象を対象とするものであり、哲学は実在に始まる理念を対象とするものであるから、その対象が違うという観点から、職分の領域を分ける方もいるが、それはトータルな考え方ではない。哲学もまた、現象を対象とし、その現象の中に理念を見抜き、法則を見抜き、真理を見抜くところに本質がある。
ヘーゲルもそのような立場であるが、現象というものを対象として把握し、そして、その中に、一条の法則を見つける、発見する、認識する、それが哲学の営みであり、学問の営みである。
科学も、その対象は現実世界であるが、その理論の源となるものは、真理である。理念である。法則である。
したがって、科学そのものを認識するということは、理法を認識することに本質があり、その理法を認識したものを、理論科学として確立し、そして、それを応用科学として様々に応用してゆくところから、科学による人類の進化発展ということが生じるのである。
その源にある精神態度と方法論は同じである。そのような観点から、「ゼロ」という概念、「無」という概念を考え、更に、時間という概念、空間という概念を考えてみたいと思う。
(つづく)
by 天川貴之
(JDR総合研究所・代表)