理念哲学講義録  天川貴之

真善美聖の「理念哲学」の核心を、様々な哲学的テーマに基づいて、わかりやすく講義したものです。

第7章「知識と叡智について」(8)

 第8節 知恵を獲得する方法について

 

 第二に、知恵についてである。一定量の読書をして、ある程度知識的前提が出来たならば、今度は、多読を控えて、自分自身の頭で思索する習慣をつけてゆくことが大切である。

 読書をすることは、いわば、受け身な形で著者の思索を受けとめる作業であるが、思索をすることは、能動的な形で、他の何にも頼らずに、自ら智恵を生み出してゆくことである。

 思索も、習慣をつけて鍛錬してゆけば、少しずつ実力がついてゆくものである。すなわち、自らの哲学的精神力を磨き、理性の力を磨いてゆくことで、無限に哲学的精神力と理性力は伸びてゆくのである。

 また、思索するためには、長い精神統一が必要である。故に、常々精神統一して、「定」に入る訓練をすることが大切である。

 さらに、学んだ知識を経験によって確認してゆくことも大切である。このように、経験を通して思索が進むこともあるのである。

 そして、知恵の段階で大切なことは、それが内奥にある知であることから、精神を開拓してゆくことが大切になってくるといえよう。これは、心の開拓といってもよいものである。

 具体的には、心と精神を透明にして、明鏡の如くしてゆくことである。

 そのためには、肉体的煩悩を反省し、浄化してゆくことが大切である。このように、反省は、認識力の向上につながるのである。

 そして、心が透明になった時、内奥から知恵の光があふれ出し、その光が、人間の本質と世界の本質を照らし出し、そして、明鏡に映して観る如く、すべてのものの本質が正しく認識できるようになるのである。

 

 (つづく)