理念哲学講義録  天川貴之

真善美聖の「理念哲学」の核心を、様々な哲学的テーマに基づいて、わかりやすく講義したものです。

第7章「知識と叡智について」(9) 天川貴之

 第9節 叡智を獲得する方法について

 

 第三に、叡智についてである。まず、新しい時代精神を探究してゆくのであるから、今の時代において、当然のこととして前提となっている思想潮流を根源的に問い直してゆくことが大切である。

 そして、今後、何百年、何千年の未来に向けて精神を飛翔させ、何が新しい精神理念として必要なのかということを徹底的に洞察することである。

 そして、新時代の理念が思索できたら、前にたちはだかるいかなる思想的潮流をもものとせず、勇気をもって思想を呈示することである。

 たとえ、同時代に理解されなくとも、後世において理解されることを信じて、あらゆる名誉欲や地位欲や金銭欲から自由になって、決して時代に迎合することなく、毅然として自らの思想を世に問うことである。

 そのためには、徹底した自己信頼が大切である。エマソンの如く、自己の内なる神を自覚し、自己の内なる時代精神を自覚し、徹底的に自己の内なる理念に忠実に思索し、思想を世に問うことである。

 探究の姿勢としては、二十四時間、常に「定」に入っている精神を築くことが大切である。それは、二十四時間、常に理念即我の境地を維持しつづけることを意味する。かかる境地から、継続した根源的なる思想が生み落とされてゆくのである。

 また、すべての思想がバラバラに観えている内は、すべての思想の内奥の内奥にまで入っていない証であるから、すべてを一なる真理として、すべてを統合的に洞察できるまで、すべての思想がつながっている地下鉱脈まで掘り下げて思索してゆくことが大切である。

 すべてのもの、すべての思想を、常に理念(イデア)の立場に立って洞察する習慣をつけてゆくことが大切である。究極の真理は理念(イデア)であり、かかる理念(イデア)を中心に、すべてが統合されているのが、人間の本質、世界の本質だからである。

 また、自己の内の内なる真理そのものと一体となって初めて、すべての真理を洞察することができるので、限りなく自己を掘り下げてゆくことである。

 思索に思索を積み重ねてゆけば、究極において、真理そのものを思索している自己、真理と一体となっている自己を見い出せるものである。自己即真理、真理即自己という境地を得ることが、叡智を得ることができる境地なのである。

 

(つづく)