理念哲学講義録  天川貴之

真善美聖の「理念哲学」の核心を、様々な哲学的テーマに基づいて、わかりやすく講義したものです。

第8章「現象と理念美について」(1) 天川貴之

 第1節 デカルト哲学と自然美について

 

 現象と理念美について述べてゆきたい。

 まず、美というものを、自然美と芸術美に分けて洞察してゆきたいと思う。

 自然美についてであるが、何故、自然の内に美を見い出すことができるのかということについて考察したい。

 近代合理主義の流れの中では、デカルトに始まるように、自然というものを、生命や精神なき物質的なるものにすぎないという見方がある。

 しかし、そのように考えていては、何故、自然の内に美を見出すことができるのかということに対して答えることはできない。

 何故なら、美とは精神的なるものであり、何らかの精神的なるものが、自然の中に見い出されなければならないからである。

 そもそも、美とは、理念の一つの顕れであるという立場に立つならば、自然の内に、理念というべきものが見出されなければならないのである。

 故に、デカルトに始まる近代合理主義は、人間の精神性と自然の物質性というものをはっきりと区別するが、人間が自然の内に美を観じるという以上、人間の精神と自然の奥なるものとの間に、何らかの相互作用を認めることが大切であり、その意味で、自然の中に、人間の精神と相互作用する何かを見い出さなければならないといえるのである。

 故に、自然を単なる物質的なるものと観る見方は、充分でないといえる。あくまでも、自然の奥なるものを観じてゆかなくてはならないのである。

 

(つづく)