第8章「現象と理念美について」(12) 天川貴之
第10節 無限なる理念美へと飛翔し、表現せよ
これまで、自然美と芸術美について考察してきたが、共にその根底にあるものが理念美であるという点において、またそれが、絶対者の美であるという点において一致している。
いうまでもなく、自然とは絶対者が創られたものであり、芸術とは、絶対者の分身である人間が創るものである。
絶対者とは無限自由なものであるが、人間とは、有限にして無限、不自由にして自由なものである。
私達は、この地上世界において、自然という絶対者の創造物の内にあり、無限の芸術性の中で、無限へと向かう有限なる人間の芸術が、人間独特の味わいをもって創られてゆくのである。
大いに自然に学び、無限へと飛翔し、限りなく無限なる精神の美、理念の美を地上に表現してゆかなくてはならない。
私達は、現象の内にあって、現象を超えなければならない。そして、理念へと到らなければならない。
そして、理念の立場から、理念美を地上に表現してゆかなくてはならない。理念美と一体となって、理念美そのものとなって、生きてゆかなくてはならない。
それこそ、真に美しい人間の生き方である。
(つづく)
by 天川貴之