第8章「現象と理念美について」(7) 天川貴之
第6節 芸術美の本質について
次に、芸術美について考察してゆきたい。一般に、芸術の本質は美の表現にあるといえる。では、美とはどこにあるものなのであろうか。
前述のとおり、究極の美とは、理念の顕れであり、究極の美とは、絶対者そのものである。
故に、美の根源にあるものは、絶対者そのものであり、理念そのものであるということを述べておきたい。
さすれば、美の探究とは、すなわち絶対者の探究であるといえる。
究極の美への道とは、絶対者への道であり、究極の美の実現のためには、絶対者と一体にならなければならないといえるのであろう。
絶対者とは、天上的なるものの究極にあるものである。この天上的なるものを、イデアといい、理念と呼び、古来より近現代に到るまで、一貫して追究されてきたのである。
地上にあって地上にあらざるもの、天上的なるものを認識するということこそ、美の認識の原点である。
しかも、ここでいう天上的なるものとは、地上の現象を全く離れたものでもなく、地上の現象の内奥に実在するものであって、現象を通して、現象の内奥に認識できるものなのである。
例えば、人間や自然という現象を通して、現象の内奥に認識できるものなのである。
(つづく)
by 天川貴之