理念哲学講義録  天川貴之

真善美聖の「理念哲学」の核心を、様々な哲学的テーマに基づいて、わかりやすく講義したものです。

第8章「現象と理念美について」

第8章「現象と理念美について」(14) 天川貴之

【注解的続編】(2) ④ 精神の内奥なる理念美の顕現とは、いわば芸術的悟りであるといえる。 故に、悟りに多様なる境地と段階的階梯があるように、芸術的悟りにも、多様なる境地と段階的階梯があるといえるのである。 ⑤ こうした理念美の段階説は、プロティ…

第8章「現象と理念美について」(13) 天川貴之

〔注解的続編〕(1) ① 理念哲学の代表として挙げているプラトンやヘーゲルの哲学においても、自然の奥なる精神性、理念は、充分に探究されているとはいえない。 その中にあって、エマソンは、自然の奥に積極的に精神性、理念を認めているといえよう。 例え…

第8章「現象と理念美について」(12) 天川貴之

第10節 無限なる理念美へと飛翔し、表現せよ これまで、自然美と芸術美について考察してきたが、共にその根底にあるものが理念美であるという点において、またそれが、絶対者の美であるという点において一致している。 いうまでもなく、自然とは絶対者が創ら…

第8章「現象と理念美について」(11) 天川貴之

第9節 一見「美」の形式を崩した芸術の美について(2) では、これらの芸術観と理念芸術観は矛盾するのであろうか。 私は、そうではないと考える。 人生の本質も世界の本質も、「本質」であるという点において理念に入るので、これらの芸術もまた、理念芸…

第8章「現象と理念美について」(10) 天川貴之

第9節 一見「美」の形式を崩した芸術の美について(1) 以上、芸術の理念美について述べてきたが、芸術の中には、一見「美」の形式を崩したような美があるということについても探究しておきたい。 特に、現代芸術においてその傾向が多いが、その中には、一…

第8章「現象と理念美について」(9) 天川貴之

第8節 あらゆる芸術の頂点としての理念美について そして、同一の理念美を、絵画を通しても、彫刻を通しても、また音楽を通しても表現できるということは、絵画も彫刻も音楽も、同一のものの異なった顕れであるということができるのである。 故に、すべての…

第8章「現象と理念美について」(8) 天川貴之

第7節 芸術家の理念の輝きの段階性と多様性について このように、理念美というものは、芸術が究極において追究しているものである。 そして、前述したように、理念美にも、究極の理念美を頂点として、段階性と個性の多様性があるものであり、それを認識する…

第8章「現象と理念美について」(7) 天川貴之

第6節 芸術美の本質について 次に、芸術美について考察してゆきたい。一般に、芸術の本質は美の表現にあるといえる。では、美とはどこにあるものなのであろうか。 前述のとおり、究極の美とは、理念の顕れであり、究極の美とは、絶対者そのものである。 故…

第8章「現象と理念美について」(6) 天川貴之

第5節 理念美の段階性と個性の多様性について そして、この美にも段階の違いがあるといえるのであり、それは、理念に段階があるのと同じである。 本来の理念とは、絶対者そのものであり、真理そのものであるといえるが、同時に、理念にも顕現レベルに差があ…

第8章「現象と理念美について」(5) 天川貴之

第4節 エマソン哲学と理念認識について(2) そして、科学者は、一見、自然の現象を解明しているようにみえて、実はそうではないのである。 自然界の「法則」を発見するということは、現象の奥にある理念そのもの、絶対者そのものを認識することを本質とし…

第8章「現象と理念美について」(4) 天川貴之

第4節 エマソン哲学と理念認識について(1) 近代ロマン主義の芸術的思想家にエマソンがいる。彼は、何よりも自然に美を見い出し、高度な精神性を見い出している。 彼の思想の中においては、自然を、絶対者の象徴と把握している。そして、自然の象徴を解読…

第8章「現象と理念美について」(3) 天川貴之

第3節 シェリング哲学と現象と理念について このように、人間の精神と自然の内に、理念(絶対者)を叡智的直観によって認識できるとした哲学者にシェリングがいる。 シェリングの同一哲学は、人間と自然に同じ絶対者を見い出すことによって、人間と自然と絶…

第8章「現象と理念美について」(2) 天川貴之

第2節 カント哲学と叡智的直観について カントは、『判断力批判』の中で、この自然の奥なるものについて、「合目的性」という観点から解釈している。 しかし、主観的構成論の認識的立場から、人間の認識に限界を認め、自然の合目的性や美というものは、客観…