第8章「現象と理念美について」(11) 天川貴之
第9節 一見「美」の形式を崩した芸術の美について(2)
では、これらの芸術観と理念芸術観は矛盾するのであろうか。
私は、そうではないと考える。
人生の本質も世界の本質も、「本質」であるという点において理念に入るので、これらの芸術もまた、理念芸術であるといえるのである。
しかも、人生の本質と世界の本質を顕わした芸術作品は、一見不調和な表現も手段として用いるが、全体として達観した時に、通常の美とは一味違った、独特の美を感じさせるといえよう。
このように、芸術の本質とは美であり、それは、理念芸術によって真に顕わされるといえよう。
(つづく)
by 天川貴之