第9章「経験と叡智的直観について」第9節(1) 天川貴之
第9節 統合哲学の時代(1)
近代の哲学は「人間」から出発した。中世は「神」から出発した。
新時代は、絶対者たる神と、自由意志を与えられた絶対者の一部であるところの人間が、共同作業によって、叡智の全貌を解明してゆくことが、その中核となる時代となる。
かかる新時代の要請に基づいて、我々は、哲学を、本当に統合理性の哲学としてイノベーションしてゆかなければならない。
そこの中心的鍵を握る認識論が、「叡智的直観」である。カントは、叡智的直観という立場をしりぞけた。
しかし、叡智的直観というものが持っていた価値の鉱脈は、深く大きなものである。
新時代においては、この「叡智的直観」という言葉が、「悟り」という言葉と共に復活するのである。
(つづく)
by 天川貴之